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06.01.12 木曜日

多苗尚志のサシ呑みクルセイダーズ 1

今年から始めようじゃないの。

100人とのサシ呑みできるかな?

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20時5分。

四谷三丁目の地下鉄出口を地上に上がると、
消防署前の大きな交差点を自動車が行き交っている。

倭[おとこ]が向かいの信号に待っているのが見える。

倭の風貌は只のサラリーマンである。

スーツに黒のロングコート。

やはり書物が入っているのだろう、右に学生時代と変わらず重そうな黒い鞄を提げている。

信号を待つ者は老若男女8人程。

倭を含めて特に目立った服装の者はいない。

だが、ただ一閃。

8人の草むらからただ一閃。

都会の絶え間ない自動車の往来の間隙を、倭の凶々しい眼光だけがこちらを貫く。

彼の眼鏡の下より貫く。

その倭、マッド。

ただし、科学者に非ず経済学者。

“マッドエコノミスト”外木暁幸がこちらの岸に渡ってくる。

「多苗くぅん。5分遅刻だよ?」

外木暁幸。またの渾名[あだな]を“最強弁士”。

1996年来の友。

経済・政治・社会・数学・美学・ゲーム・アニメ・人生哲学までを一気通貫する最強の論客だ。

96年来、己は彼が論破された時を見た事がない。

論陣の地に膝をついたのを見た事がない。

I have never seen…その…なんだ…。

96年来、外木と己と“極悪犬”仁藤和良と“オニイサンオブマツダ”松田能成が仲良しであった。

我々4人を貫いていた命題は「社会との関わり方」であり、「成長」であり、
それらの命題から導かれた世界観を共有していた。

時は流れ2006年。

おそらく4人の中で唯、己だけが「成長」を放棄し世界観を書き換えた。

その新しい世界観を以て外木と対峙する。

外木暁幸はひとつ上という事もあって、4人の中でも抜けた存在であり
3人は多かれ少なかれ彼を畏れていた。

畏友である。

その彼にサシで対峙し、現在の己の世界観をもっていくのが今日だ。

果たして己はそれを通したという感覚を得た。

それは彼に膝をつけさせるという形ではなく
おのが道を朧気ながらにも表明するという形をもって。

二軒目のビールがうまかった。

シアワセを感じる。

我が人生において、この倭とあと何度こうした酒を酌めるだろうか。

投稿者 多苗尚志 : 2006年1月12日 18:23編集
[ 外木暁幸伝多苗尚志のサシ呑みクエスト ]

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