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07.02.21 水曜日

多苗尚志のサシ呑みクエスト42 金房毅

サシ呑みクエスト41が吉田学で42がこの倭[おとこ]だというのは面白い。

金房毅である。


己のひとつ下。

己の生涯初の弟分。

80年に出会う。

己が幼稚園にあがる前。

金房家と多苗家はマンションでお隣さんだった。

毅が小学校に上がる前に金房家はアメリカへ飛び、
小学校4年で隣に還ってきて
中学にあがる前に実家のある神戸へ引っ越した。
今は家を離れて神戸に住んでいる。

今日は大阪・梅田まで出てきてもらってふたりで呑む。

奴は生き物が好きでクワガタから犬まで博く飼っており、
今はペットショップに勤めているが
初めて奴にカブト虫を魅せてやったのは己だ。

アメリカ還りと運動的にとろくさいのでクラスメートからはいじめられていたようだが
同い年の学や己なんかは仲良くしていたので彼の人格形成に影を落とすほどではなかった。

いじめられはしたもののやられ体質ではなく、
自分の考えを毅然と表明し、むしろ己が言っても聞かぬほどの頑固さを持つ。


小学校の頃は餓えているのかというくらいガリガリだったが
今はふっくらふくよかだ。

ガリガリな時のあいつと取っ組み合いをすると、ガリガリなくせに華奢ではなく
骨がゴツゴツ当たって痛かった。

奴の骨のイメージと性格の頑固なゴツゴツ感と毅然とした態度。

彼を"毅然武骨"と喚ぼう。

実に27年のつきあいということになるがサシで呑んだのは
今日が初めてだ。

最近の話を聞いてみると、
相変わらず人の話を聞かないことで痛い目を踏んでいる。

周りが「そっちにいくと痛い目にあうぞ!」と警告してるのに、
めでたくそっちにいって痛い目にあう。

しかし、奴のその態度、嫌いじゃない。

分かりたくないのだよ。

人の言葉なんかを呑んでなにを「分かって」いるというのだ。

自分で痛い目にあって、痛いと実感することを尊しとしたい。


よく、ガキの頃の友達はいつになっても変わらないという話がある。

総理大臣とヒラのサラリーマンとして再会しても
音楽大好きとスノボ大好きとして再会しても
昔と変わらず腹を割って話し合える。

それは、損得とか趣味が同じという理由でつきあいはじめた友ではなく
「出会ったから友達」として始まった友だからであろう。

彼は優秀な営業マンだ。

ペットショップの前は呉服屋に勤めていてそこで素晴らしい営業成績を修めていた。

今のペットショップではまだアルバイトの立場なんだそうだ。

ペットショップにおいては、1日に犬を2匹でも売ればその日は酒をうまく呑めるらしいが
バイトである彼は1日に20匹売る!

「はぁ!?」みたいな感じなんだそうである。

痛快だ。


チェーンが長野で新店オープンするらしく、
そこへ出張ヘルプでいってくれないかと頼まれたらしい。

バイトが出張ってどういうことだよ、と笑う彼。

その次の瞬間、笑いを止めて彼は語る。

「営業でトップをとるのなんて簡単なんだよ。でも、オレはそうじゃなくて
 もっと普遍的なもの。人間のしあわせというものをみつめたい。
 オレの場合それは『家族』なんだよね。」

誇らしき弟。

静かに熱く呑む我々の周りに梅田の喧噪が渦巻いていた。

※このエントリをもって"毅然武骨"金房毅が友いるKIに入伝しました。

投稿者 多苗尚志 : 2007年2月21日 14:04編集
[ 金房毅伝多苗尚志のサシ呑みクエスト ]

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