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06.12.04 月曜日

多苗尚志のサシ呑みクエスト 36 岩下拓

"鼻くそ拓"岩下拓は日本に還ってくると、

時に家族の元に還るより先に己の家にやってくる。


拓は5つ歳下。己が小一の時、こいつはまだ精子だったんだ。(計算違い)


同じ乙女座同士でよく気が合う。


先週末、仕事に集中しようと思い、平日遊ぶのはやめだ!と決めたのだが、

拓が還ってきたとあっては、それがいきなり覆ってしまう。


今週一週間は拓漬けになりそうだ。


大丈夫。夜更かしはしない。遅刻はしないぞ。


吉牛で腹ごしらえも済ませ、いざサシで呑まんとする。


焼き肉屋。


拓とのサシ呑みは、ちょっと異質だ。


全然、話が深くならない。


サラサラっと表面をなでるだけ。


九ヶ月ぶりに会って


己:「で?どうよ最近は...。」

「はい。どうスかね。」

「...。」

「...。」

「終わりかよ。」

「笑。あ、いや...」

「仕事は?」

「はい、やめました。」

「え!?やめたの?」

「はい、日本で働こうと思って。」

「ふーん。シンヴェン(拓の彼女。だった。今奥さん。九ヶ月の間に気づいたら結婚してた。)ちゃんは?」

「あっち(上海)にいます。」

「ふーん」


終わり。


やる気ない感じでしょ?


"スピードの哲人"清水宣晶が褒めてくれる己の能力
『パルプンテ・クエッション"突拍子もない質問力"』も
『ピーラー・クエッション"丸裸にする質問力"』もまるで発動しない。


拓はね、論理的にグリグリ語り合うより

テキトーにサーフィスでウダウダッと呑んだ方がみえてくるものが大きい相手なんです。


昔からそう。


中国に征きたい、と6年前に奴は言った。


なんで?と尋くと


「親父が征けって言うんスよ。」「やっぱ中国の時代じゃないスか」


はぁ、そうですね。


んで、征く直前になって


「多苗さん、中国って日本人が神隠しに遭うっていうじゃないでスか。

 デパートの試着室に入ったっきり還ってこなかった人とか

 いっぱいいるみたいッスよ。」とか眉をハの字にして不安そうに言い出す。


ああ、そうですね。


下らないからワシは中国門出を壮行して立川の麻婆豆腐屋に連れていったよ。


「多苗さん。麻婆なんてこれからいくらでも食える、食える!でも、おいしいケド」


あれから6年。


「なんで中国語なんだよ」とか「もっと自分を見つめろよ」とか
「お前の本当にやりたいことはなんなんだよ」とか

言わなくてよかったと本当に思う。


拓は立派にしあわせそうに生きている。


また成長もしている。


己が言うことじゃないかもしれないけど。


よくよく「教育」って言葉が嘘臭いと己は思うよ。


正しい道を教えて育てるってのか?


お前が?


随分、厚顔無恥だな。


答えはそいつの中にあるだろう。


他者と触れ合うこと、他者の匂いをかぐこと。


授ける方よりも受ける方に主体がある。


授ける、受けるの境界もあいまい。


「薫陶」でみえてくんじゃないの?


昔も今もこいつは己に真っ正面から頼り切った、かつ偏った質問をしてくる。


「やっぱ、多苗さん、これからどの仕事に就くにしても、ITは必要ッスよね。

 ITの会社に勤めた方がいいスかね。」


「ああ、そうだね。」


だいじょうぶだ。


お前はどう生きたって正解だよ。


お前のままに生きるがいい

投稿者 多苗尚志 : 2006年12月 4日 10:59編集
[ 岩下拓伝清水宣晶伝多苗尚志のサシ呑みクエスト ]

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